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2009 年09 月08 日

Q:外国人男性と結婚し日本で生活していましたが、夫が自国で離婚裁判を提起しました。私はその国に行ったこともありません。どうすれば?

A:まず夫の国での裁判が、お二人の離婚手続を裁けるか、すなわち国際裁判管轄の問題があります。そこで、可能であれば、夫の自国の裁判手続きにおいて、「管轄がないはずです」という主張をします。その結果、管轄違いのため裁判が却下されることがあります。
 ただ、奥様の方は、夫の国に行ったこともないということですから、必ずしも、その国の裁判手続に上手に参加できるとは限りませんね。それに、国によっては、奥様が居住したこともないにも関わらず、その国の管轄を認める国もあります。すなわち、原告がその国の国籍であるとか、裁判を始めたときには、原告がその国に居住していたという理由だけで、管轄を認めようとするのです。
 結果として、その国の裁判管轄が認められてしまった場合、次に行うべきは、当該裁判の中で争う(すなわち、上記の管轄のときのように裁判の入口のところで争うのではなく、離婚原因があるか否かといった内容で争っていく)ということになりますが、これは、管轄で争う以上に大変なことです。
 残念ながら、夫の国の管轄が認められ、裁判が進行して離婚が認められてしまった場合(こういうとき、多くのケースでは、親権等に関して被告側に不本意な判決が出されてしまいます)、その判決に基づいた内容が、日本の戸籍に反映されますが、その時点で、「離婚の無効確認を求める裁判」を提訴することができます。そして、かような外国判決を本邦は認めるべきではない、すなわち、民事訴訟法118条の要件を欠き、外国判決を承認すべきではないケースであるといって、日本の裁判所において争う方法があります。
 実際に、オーストラリア人と婚姻し、日本で婚姻生活を営んでいた夫婦がおり(二人は、婚姻後にオーストラリアに居住したことは一度もありませんでした)、オーストラリアで夫が離婚裁判を提起してその裁判がオーストラリアにおいて手続が進行してしまい、離婚が認められてしまったケースにおいて、妻が日本で離婚無効確認請求裁判を提起し、オーストラリアの管轄が認められるケースではない等の理由により、オーストラリアにおける判決は、日本では承認されない、すなわち、日本法上は離婚は成立していない、という趣旨の判決が平成19年に東京家庭裁判所で宣告されています。

投稿者:よしの たいら
at 20 :04| 離婚−国際離婚 | コメント(0 )

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